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考察:音楽・教育 - 2019年6月3日

アンサンブルを経験して、音楽の視野を広げましょう!

私ごとですが、ピアノを25年ほど続けてきて、ピアノ調律師として身を立て、今まで数多くのピアノ愛好家の皆様と交流する機会に恵まれてきました。おかげさまで奥さんと出会い子を授かって、娘と一緒に音楽を楽しみたいと思ったとき、自分がピアノ一筋で過ごしてきたために、娘には「持って運べる楽器」に触れてほしいという願いからバイオリンを習わせることにしました。私が習ったピアノの先生が「技術は後からでもいいから、歌うことが好きな子に育てることが大事だ」とおっしゃったので、最初からピアノをさせることを重要視しなかったのかもしれません。ともあれ、全く知らない分野に3歳半だった長女と飛び込んで行って試行錯誤を繰り返すことはチャレンジでしたが、ただただ、長女が開放弦から指で押さえるようになって曲を弾けるようになる過程を見るのは、まるで自分がバイオリンを弾けるようになっているようで楽しいものでした。

しばらくして、バイオリンの先生から発表会があるというお話をいただいて準備をしていく過程で、これまで私も娘も経験したことのないことが起こりました。そのバイオリンの発表会は、指導者の皆様が集まって合同の発表会をするようなもので、生徒たちみんなが一斉に集まって一つの曲を弾くというものでした。いわゆるアンサンブルです。1か月ほど前から合同リハーサルを重ねて本番に備えるのですが、初めてリハーサルに行ったとき、4歳だった長女はその場にキョトンと立ってほとんど何もできなかったことをよく覚えています。それは指導者協会の先生方も想定内のことで、いろいろサポートしてくださって指導してくださり、徐々に慣れていくことができました。

後日、教わっている先生に初めてのリハーサルのことを振り返るお話をしたところ「初めはね、自分の楽器以外の音が聞こえてくることにみんな戸惑うものなのよ」と聞かされ、それまでピアノ一本だった私は衝撃を受けました。バンドに参加したりはしていましたが、習い事での楽器演奏でのアンサンブルは初めてだったから「自分以外の音がある」という環境が新鮮だったのです。

それから何年か過ぎて、長女はピアノも習うようになりました。基礎練習でテンポを保つ必要があると感じたときに、私は初めてメトロノームを使って練習することを提案しました。最初はゆっくりでと、メトロノームの振り子を放して動き出したとき、長女は難なくメトロノームの拍に合わせて弾きました。多くのピアノの生徒さんたちがメトロノームに合わせて弾くことに最初苦労するなか、初日で合わせられたのは、紛れもないアンサンブルの経験で自分以外の音も聞きながら演奏することを知っているからだと思いました。

音を聞きながら演奏することに補足すると、日々の練習では本人の横でピアノでユニゾンで同じ音を出しながら一緒に弾いていました。それがどのくらい功を奏しているのかは確かではありませんが、長女はあらゆる単音をすべて音名でこたえられるようになっています。すべてバイオリンのおかげだと思っています。

ここまでの話では、まるでバイオリンの方がピアノより幼児教育に優れていると思われてしまうかもしれませんが、音楽を知るうえで最も有効な楽器はピアノであることは間違いありません。旋律があって和音があるという、アンサンブルを一人で感じることができ、それを再生できる楽器は鍵盤楽器だけなのです。音楽を知るためにピアノは不可欠だけれども、もっと掘り下げたいのであれば大勢で一つの音楽を作る経験ができるオーケストラ、特に分数楽器という子供向けの小さい楽器もあるバイオリンやチェロは早くから始められるためおすすめです。

二つも楽器を!?と驚かれるかもしれませんが、沖縄県内には複数のジュニアオーケストラがあり、ちびっ子たちが毎週集まって練習しています。中には自治体の助成により楽器の貸与を受けられる団体もあります。南国ピアノスタジオがある北谷町からは沖縄市ジュニアオーケストラが最寄りのオーケストラです。

ピアノ調律師でありピアノ教室の代表がバイオリン、オーケストラを勧めるのはおかしな話かもしれませんが、クラシック音楽の最高峰ともいえるオーケストラを経験できることは音楽を学ぶ上で必ず有効に働くし、友達もできるし、きっと楽しいはずです。お子様に音楽をさせたい保護者様にはぜひ参考にしていただければと思います。

2019年の定期演奏会ポスター
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